訪問看護ステーションの管理者になるには?条件と、立ち上げで管理者になった私が思うこと

転職ノウハウ

「訪問看護の管理者って、どうやってなるんだろう」

訪問看護で働いていると、一度は考えるテーマだと思います。私は病棟から訪問看護に移ったとき、立ち上げ期のステーションの管理者として入りました。きっかけは、知り合いからの「立ち上げを手伝ってほしい」という依頼です。

この記事では、まず制度上の「管理者になるための条件」を整理して、そのあとに私がどういう流れで管理者になったのか、なってみて分かった「条件には書いていないけど必要だったもの」を書きます。管理者を目指している人にも、声をかけられて迷っている人にも、判断の材料になるはずです。

訪問看護ステーションの管理者になるための条件

まずは制度の話から。訪問看護ステーションの管理者には、運営のルール上、決められた条件があります。

① 看護師か保健師の免許があること

管理者になれるのは、原則として看護師または保健師です。准看護師や理学療法士などのリハビリ職は、管理者の条件を満たしません。

② 常勤で、原則として管理者の仕事に専念すること

管理者は常勤で1人置くことになっていて、原則は管理の仕事に専念する「専従」です。ただ、管理に支障がない範囲なら同じステーションで訪問に出ることも認められています。実際、小さなステーションでは管理者も普通に訪問に出ていることが多いです。私もそうでした。

③ 訪問看護をするのに必要な知識・技能があること

医療機関や訪問看護などでの看護の経験があり、適切なサービスを提供するための知識や技能を持っていること、とされています。「何年以上」という全国一律の数字が決まっているわけではないので、実際には運営する会社の判断によるところが大きいです。

細かい扱いは自治体や時期によって変わることがあるので、本気で目指すなら、勤め先や運営会社にも確認してください。

つまり、資格の面だけで言えば、看護師ならハードルはそこまで高くないんです。逆に言うと、条件を満たしていることと、管理者の仕事が回せることは、まったく別の話でした。

管理者になるルートは大きく3つ

管理者になる道は、だいたい次の3つに分かれます。

① 今のステーションで昇格する

スタッフとして働いていたステーションで、管理者が辞めたり異動したりしたタイミングで任されるパターンです。利用者さんやスタッフのことをもう知っているので、入りやすさはいちばんです。

② 「管理者候補」の求人に応募する

転職サイトには、管理者や管理者候補を募集している求人もあります。条件や給与がはじめから書かれているので、比べながら選べるのがいいところです。

③ 立ち上げで声がかかる

新しくステーションを開くときに、管理者として声がかかるパターンです。私はこれでした。ゼロから作れる面白さがある一方で、最初は利用者さんもマニュアルもない状態からのスタートになります。

私が管理者になった経緯

私の場合は、知り合いから訪問看護ステーションの立ち上げを頼まれたのが始まりです。

そのとき言われたのが「メンターをつけるから、初心者でも大丈夫」という言葉。滅多にないチャンスだし、自分にとって大きな経験になると思いました。

迷ったのは「自分にできるのか」という一点だけです。私は訪問看護のスタッフを経験しないまま、病棟からいきなり管理者になりました。制度のことも、書類のことも、営業のことも、正直に言えば全部が不安でした。

だから面接ではスケジュールを詳しく聞き返して、返事はその場でせずに持ち帰って決めました。給与も面接で提示されたので、「年収を落とさない額」をお願いしたら通りました。そのぶん、背負う責任も増えたわけですが。

引き受けると決めたときは、「やるからには成功させたい」という気持ちでいっぱいでした。誘われたときに何を確認すべきかは、訪問看護の管理者に誘われたら確認したい5つのことに詳しくまとめています。

不安をどう埋めたか

不安だったからこそ、準備はしました。メンターに訪問看護の運営について聞いたり教わったりして、本やネットでも調べて、分からないところはメンターに確認する。この繰り返しです。

それでも、実際に始まってみると毎日が初めてのことばかりでした。調べて分かったつもりになっていても、目の前で起きることはその通りにはいきません。病棟から管理者になるなら、「準備すれば大丈夫」ではなく「準備しても初めてのことは毎日来る」と思っておくくらいがちょうどいいです。

なってみて分かった「条件に書いていない」必要なもの

制度上の条件は、免許と常勤と経験。でも、実際に管理者として1年働いてみて、本当に必要だったのはそこに書かれていないものばかりでした。

営業する力

立ち上げ期は利用者さんがいないので、自分で営業に回って契約を取りに行きました。行き先は地域包括支援センター、グループホーム、高齢者施設、病院、ケアマネジャーさん。しかも営業は最初だけでは終わらず、管理者を辞めるまでずっと続きました。看護師になって営業をするとは思っていなかったので、最初の1か月でいちばん辛かったのは運営と営業です。そのころの話は看護師なのに営業?訪問看護の管理者が地域を回った話に書きました。

事務とレセプトをこなす体力

管理者になっても訪問件数は減らず、むしろ増える一方でした。そこに記録、ステーションの掃除、月末のレセプトが乗ってきます。訪問そのものは苦ではなかったのに、事務の時間のほうが大きくなって、「私、何してるんだろう」と思う日が増えていきました。

オンコールを持ち続ける覚悟

オンコールは毎日、ほとんど私が持っていました。出動は月1〜2回でしたが、問題は回数よりも精神的な緊張です。仕事から完全に離れられる日はありませんでした。オンコールのしんどさはオンコールがきつい看護師へ|毎日オンコールだった私の体験と負担を減らす選択肢にもまとめています。

一人で判断を背負う強さ、と同時に「相談する力」

メンターがついていたのは契約上の3か月だけ。外れたあとに一番きつかったのは、忙しさより「判断を誰とも分け合えない」孤独でした。

そしていま思うのは、強さより大事だったのは「相談する力」だったということです。私は本部にスタッフの補充を相談しないまま、自分の中で抱え込んでしまいました。

業績と人の配置をセットで考える視点

私のステーションは、施設から移ってきたスタッフ2人と私の3人体制で、最後までスタッフは増えませんでした。利用者さんだけが増えていき、訪問が私に集中しました。

利用者さんが増え始めたころに、業績とスタッフの配置・補充をセットで考えて動けていれば、と今は思います。これは管理者の仕事の中で、いちばん「条件」からは見えにくい部分です。

管理者を目指す前に考えておきたいこと

ここまで書くと大変なことばかりに見えるかもしれません。でも、管理者という働き方そのものを否定したいわけではないです。私自身、引き受けたことは自分で決めたことでした。そのうえで、目指す前に考えておいてほしいことを挙げます。

サポートは「誰が」「いつまで」つくのか

「サポートがあるから大丈夫」と言われたら、期間と中身を聞いてください。私のメンターは3か月で、それ以下でもそれ以上でもありませんでした。

スタッフを増やす計画があるのか

いまの人数より、「利用者さんが増えたらどう補充するのか」。ここが決まっていないと、増えた分はそのまま管理者にのしかかります。

自分が「好きな仕事」はどこにあるのか

管理者になると、看護より運営や事務の時間が長くなります。利用者さんと関わる時間がいちばん好きな人ほど、そのギャップは大きいです。私の場合、事務がメインになって看護のやりがいを感じにくくなったことが、辞める理由のひとつになりました。

管理者の自分も「職員の一人」として大事にできるか

私はもともと「職員は宝」だと考えていて、それは今も変わりません。ただ、いま思えば、管理者である自分自身も、その職員の一人として大事にするべきでした。目指すなら、ここだけは忘れないでほしいです。

管理者を辞めたあとの私

私は1年で管理者を辞めて、ナース専科を使って循環器外科の病棟に転職しました。面接では志望動機を聞かれて、「事務作業が辛くて、現場に戻りたい」と正直に答えました。

病棟に戻ってからは、患者さんと関わる時間がちゃんと戻ってきました。管理者を辞めたことに後悔はありません。辞めるか迷っている人は訪問看護の管理者を辞めたい【経験者が伝えたい3つの選択肢】も読んでみてください。

管理者の経験は、いまも私の強みになっている

大変なことが多かった1年ですが、管理者になってよかったと思えることもあります。運営、レセプト、営業、そして人を管理することの難しさを、身をもって知れたことです。

病棟に戻ってからは、患者さんが退院したあと、自宅でどうセルフケアをしていくかを見据えて考えられるようになりました。訪問看護で在宅の生活に関わったからこその視点です。

それに、運営をしていたからこそ、師長の苦労や、病院のコスト・運営のことも意識するようになりました。いまは病棟スタッフですが、病棟や病院全体のことを考えて行動できている。これは自分の強みだと思っています。

もう一度「管理者を」と言われたら?

もし今、もう一度「訪問看護ステーションの管理者をやってほしい」と声をかけられたら。いまの私の答えはNOです。いまの職場の環境が自分に合っているからです。

ただ、この先ずっとNOかというと、そうではありません。環境や気持ちが変われば、管理者をする余地はあると思っています。高齢化が進み、入院期間も短くなっていく流れのなかで、訪問看護の需要はこれから増えていくと私は考えています。そのぶん、管理者を必要としているステーションも増えていくはずです。

まとめ|条件より「体制」と「自分の向き」を見てほしい

訪問看護ステーションの管理者になる条件は、看護師(または保健師)の免許、常勤であること、必要な経験があること。資格の面だけなら、看護師なら目指せる人は多いです。

でも、実際に回していけるかを決めるのは、条件ではなく「サポートの期間」「スタッフを増やす計画」「自分が何の仕事を好きか」です。声をかけられたら、その場で返事をせずに一度持ち帰ってください。私もそうしました。持ち帰って、聞きたいことを全部聞いてから決めても、遅くはないです。

そして、もし引き受けて大変な思いをしたとしても、その経験はなくなりません。私の場合、管理者の1年は、病棟に戻ったいまも強みとして残っています。

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