訪問看護の人間関係はラク?3人のステーションで管理者をした私が感じた難しさ

働き方・職場

「訪問看護って一人で回るから、人間関係はラクなんでしょ?」

病棟で人間関係に疲れていると、そう考えたくなりますよね。気持ちはすごく分かります。でも、少人数のステーションで管理者をしていた私の答えは、ちょっと違います。

訪問看護の人間関係は、ラクというより「種類が違う」。人数が少ないぶん、ひとつのズレが職場全体の空気になってしまうんです。実際、私が1年で管理者を辞めた理由のひとつも人間関係でした。

この記事では、職員2人と私の3人で回していたステーションで感じたことと、転職前に人間関係を見極めるためのポイントを書いていきます。

私がいたステーションは「3人だけ」の職場だった

私が管理者をしていたのは、立ち上げ期の訪問看護ステーションです。スタッフは施設からそのまま移ってきた2人だけで、最後まで増えませんでした。

一方で、利用者さんは数人から30人ほどに、施設との契約もゼロから4つほどに増えていきました。増えた訪問はほとんど私のところに集まり、オンコールもほぼ私が持っていました。

3人しかいない職場なので、誰か1人と考え方が合わないだけで、職場の3分の1がズレていることになります。病棟のように「この人とは合わないけど、ほかの人とは話せる」という逃げ道がないんです。

少人数ステーションの人間関係が難しい3つの理由

① 合わない人と距離をとれない

訪問中は一人ですが、事務所に戻れば、記録も訪問の報告も同じ数人のなかで回ります。大きな病棟なら、勤務がずれたりチームが違ったりして自然と距離がとれます。少人数のステーションでは、それがほぼできません。

だからこそ、ちょっとした違和感がたまりやすい。激しくぶつかるわけじゃなくても、「なんとなくチームとして動けていない」感じが毎日続くと、じわじわ削られます。

② 看護への温度感の差が、そのまま表に出る

これが私にとって一番大きかったことです。うちのステーションには、スタッフと共通する理念がありませんでした。私自身は「安心できる看護を届けること」を心がけていましたが、それを言葉にしてスタッフと共有することはできていなかった。

しかもスタッフ2人は、施設からそのまま訪問看護に移ってきた人たちです。同じ理念や目標に引かれて集まったわけではないので、理念も目標も、看護に対する価値観も、最初から違っていました。

その結果、看護に対する温度感の差がとても大きくなりました。私は管理者でしたが、スタッフ2人より年下です。理由をきちんと説明したうえで協力をお願いしても、2人はそれまでの自分のやり方を変えようとはしませんでした。

そこで分かったのは、相手を変えようとしても、すぐには変わらないということ。そして変えようとするほど、こちらが疲れていくということです。

誤解のないように書いておくと、スタッフ個人が悪かったという話ではありません。それまでのやり方で働いてきた人に、価値観の違う年下の管理者が「こう変えてほしい」と言っても、すぐには届かないのは自然なことです。人数が多い職場なら、温度感の違う人がいても全体でならされます。でも3人だとならされず、差がそのまま職場の空気になるんです。

③ 仕事の偏りを、私が口に出さなかった

利用者さんが増えても人は増えないので、訪問もオンコールも私に寄っていきました。1日の訪問件数は5件ほどから10件ほどに。訪問そのものは苦じゃなかったんですが、そこに管理者の事務作業が重なって、休みの日も仕事が頭から離れなくなりました。

ここで問題だったのは、偏りそのものより、私がそれを誰にも言わなかったことです。スタッフにも、本部にも。「利益が出てから相談しよう」と考えて、自己完結していました。少人数の職場では、一人が黙って抱えると、それが見えないまま固まってしまいます。

管理者として、私がやればよかったと思うこと

振り返ると、人間関係がうまくいかなかったのは「相性が悪かったから」だけではないと思っています。管理者としての動き方にも原因がありました。

最初に「どんな看護をしたいか」を共有する

立ち上げ当初はマニュアルも手順もなく、ルールは私一人で作って、動きながら直していました。スタッフ2人は作成に関わっていません。忙しさのなかで、それが一番早いやり方だったんです。

情報共有の時間もありませんでした。毎日やりとりしていたのは訪問の報告くらいで、それ以外の話をする場はほとんどなかったんです。立ち上げ当初は忙しくて、理念を共有するところまで手が回りませんでした。

理念は大事だと、いまははっきり言えます。同じ理念や目標に共感して働いてくれる人が集まることが、職場が長続きする秘訣だと思っています。価値観が合わなければ、一緒に働くのはなかなか難しい。理念がないまま走り出すと、あとから温度感の差を埋めるのは本当に大変です。このあたりの反省は立ち上げ期の訪問看護ステーションに転職するのはあり?でも詳しく書いています。

一人で抱え込まず、早めに相談する

本部に相談しなかった理由は、「利益が出てから」と考えていたこと、本部の相談相手も疲れているように見えたこと、1年足らずで信頼関係を築けていたとは思えなかったこと。どれも少しずつありました。

いまの私があのころの自分に言うなら、「一人で抱え込まないで、早めに相談して」。全体を見て改善できることがあれば提案して、もっといい職場にならないか一緒に考える。人間関係も、一人で何とかしようとするほどこじれやすいです。

それでも「職員は宝」という考えは変わらない

私はもともと、職員を大事にしない会社は成長しないと考えていて、これはいまも変わっていません。

ただ、ひとつ付け足すことがあります。いま思えば、管理者である自分自身も、その職員の一人として大事にするべきでした。自分をすり減らしながら職場の空気をよくしようとしても、余裕のなさは周りにも伝わります。

私が考える「いい職場」は、看護の価値観や理念が近い人が、同じ方向を向いて目標に向かえるところです。人数が少ない訪問看護ほど、この条件の重みは大きくなります。訪問看護に向いていない人の特徴でも書きましたが、一人で動く仕事だからこそ、チームの価値観の共有が病棟以上に大事なんです。

病棟に戻って分かった、「同じ目標で働く」ことの大切さ

管理者を辞めて病棟に戻る転職をしたとき、私は病院の理念も調べて、納得してから入職しました。

いまの職場の人間関係は良好です。その証拠に、いまも同じ職場で働き続けられています。同じ目標を持って仕事をすることがどれだけ大事か、身をもって分かりました。

そして、訪問看護で管理者をした経験はいまも生きています。病棟全体を見て、どう運営していくかを考えながら働けているのは、あの1年があったからです。

転職前に、人間関係を見極めるためにできること

求人票には人間関係のことは書いてありません。だから、面接や見学で自分から聞きにいくしかないです。私の経験から、次の3つは確認しておくのがおすすめです。

① ステーションの理念と、それをどう共有しているか

理念があるかどうかだけでなく、「スタッフとどう共有しているか」まで聞いてください。朝の打ち合わせで話す、カンファレンスで立ち返る、など具体的な答えが返ってくるかどうか。私のところのように「管理者の頭の中にだけある」状態だと、温度感の差は生まれやすいです。

② スタッフの人数と、仕事の分け方

何人で回しているか、オンコールは誰が何回持っているか、利用者さんが増えたら人をどう補充するのか。少人数のステーションほど、偏りが人間関係のひずみになりやすいので、分担の考え方は大事なチェックポイントです。

③ 見学で、スタッフ同士のやりとりを見る

見学や同行ができるなら、スタッフ同士の話し方や、管理者がスタッフにかける言葉を見てください。少人数の職場ほど、数時間いるだけで空気は伝わってきます。ほかの見極めポイントは訪問看護ステーションの選び方にまとめています。

自分では聞きにくいことは、転職サイトの担当者に確認してもらう手もあります。私は管理者を辞めて病棟に戻るときにナース専科を使いました。ただ、担当者から聞く情報がすべてではないので、気になるところは自分の目でも確かめてください。

まとめ|訪問看護の人間関係は「人数」と「理念」で決まる

訪問看護は一人で動く時間が長いぶん、人間関係から逃げられる仕事に見えます。でも少人数のステーションでは、一人ひとりの温度感の差がそのまま職場の空気になります。

私が3人のステーションで学んだのは、人間関係は相性だけで決まるわけじゃない、ということ。最初に理念を共有できているか、仕事を一人に偏らせていないか。そこが整っている職場なら、少人数でもいいチームになれるはずです。

病棟の人間関係に疲れて訪問看護を考えているなら、「一人だからラク」で選ぶのではなく、「どんな人たちと、どんな看護をするか」で選んでみてください。

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