訪問看護の管理者に誘われたら確認したい5つのこと|「メンターがつくから大丈夫」で引き受けた元管理者の話

働き方・職場

「訪問看護を立ち上げるんだけど、メンターをつけるから初心者でも大丈夫だよ」

知り合いからそう言われて、私は訪問看護ステーションの管理者になりました。滅多にない話だし、経験になると思った。実際、経験にはなりました。ものすごく。

結果から言うと、私がその会社にいたのは1年でした。ただ、あのとき「メンターがつく」の中身をもっと具体的に聞いていたら、その1年の景色は少し違っていたかもしれないとも思っています。

この記事では、管理者を打診されたときに確認しておきたいことを、私が実際につまずいた順番で書きます。管理者に誘われて迷っている人、話は魅力的だけど不安のほうが大きい人に向けて。

迷ったのは「自分にできるのか」だけだった

私が引き受けるまでに迷ったのは、そこ一点です。給与が不安とか、忙しくなるのが嫌とか、そういう迷いではなく、単純に自分の力で務まるのかどうか。

だから面接のときは、スケジュールをしっかり聞きました。1日がどう動くのか、月はどう回るのか。そのうえで返事は持ち帰って、よく考えてから受けました。

即答しなかったのは、今振り返っても正解でした。持ち帰るのは失礼じゃないです。むしろ「よく考えたい」と言える人のほうが信頼されると思う。

そして、やると決めたからには成功させたいという気持ちはありました。あの気持ちがなかったら、たぶん最初の数か月で潰れていました。

引き受ける前に確認しておきたい5つのこと

ここからが本題です。私が聞き足りなかったこと、聞いておいてよかったことの両方を並べます。

1. サポートは「誰が・いつまで」つくのか

これが最大の反省点です。

「メンターをつけるから大丈夫」という言葉を、私は「困ったらずっと相談できる人がいる」という意味で受け取っていました。実際についてくれたのは3か月。契約上のもので、それ以下でもそれ以上でもなかった。悪い人だったわけではなく、そういう取り決めだっただけです。

3か月って、訪問看護の立ち上げでは何も落ち着いていない時期です。そこから先は自分で判断していくことになりました。

だから確認するのは「メンターをつけますか」ではなく、こうです。

  • その人は何か月ついてくれるのか
  • どの範囲まで相談できるのか(運営だけか、看護の判断もか)
  • その期間が終わったあと、相談先はどこになるのか

本部に相談できる人はいました。でも正直、なかなか信用しきれなかった。立場が違う相手に弱みを見せるのは、思っていたより難しいことでした。相談先が「制度としてある」のと「実際に頼れる」のは別なんだと、あのとき知りました。

3か月が過ぎてメンターがいなくなったとき、私が感じたのは孤独でした。孤立している、という感覚に近い。忙しさで倒れそうというより、判断を誰とも分け合えないことがきつかった。管理者のしんどさって、この種類のものなんだと思います。

2. 営業と運営まで自分がやるのか

これは看護師の求人票にほぼ書いてありません。でも立ち上げなら、まず間違いなくやります。

実際にどこを回って、何をしていたのかは別記事に書きました。
看護師なのに営業?訪問看護の管理者が地域を回った話

私は自分で営業に回りました。地域包括支援センター、グループホーム、高齢者施設、病院、ケアマネさん。必要としている方に届けるために、とにかく契約を取りに行きました。看護学校で習ったことがひとつも役に立たない領域です。

最初の1か月で一番きつかったのは、この運営と営業でした。看護がしんどかったわけじゃない。初めてやることを、教科書なしでやるのがしんどかった。

だから聞いてほしいのは「営業は誰がやるんですか」です。専任の人がいるのか、管理者が兼ねるのか。兼ねるなら、そこに何割の時間を使うことになるのか。

3. 訪問件数は減らしてもらえるのか

私の場合、減りませんでした。増える一方でした。

理由ははっきりしています。職員が増えなかったからです。うちは施設からそのまま移ってきた2人だけで、そこから人は増えませんでした。一方で営業が実を結ぶほど利用者さんは増えていく。増えた分を誰が持つかといえば、管理者の自分です。

ここは立ち上げを引き受けるなら、いちばん見ておいてほしいところかもしれません。「利用者を増やす計画」と「職員を増やす計画」がセットになっているか。前者だけがある職場だと、増えた仕事はまるごと自分に乗ります。

ただ、増えたことには意味もあって。件数が数字に表れていたから、職員の給料はちゃんと払えていました。あれは管理者として素直にうれしかったです。

それでも、事前に「管理者になったら訪問は何件くらいになりますか」と聞く価値はあります。返ってきた答えが自分の想像より多いなら、その分の事務作業がどこに押し出されるのかまで想像してみてほしい。

4. オンコールは誰が最終的に受けるのか

私は毎日オンコールを持っていました。実際に出動するのは月に1〜2回。回数だけなら少ないです。

でもしんどかったのは出動そのものじゃなくて、鳴るかもしれない状態がずっと終わらないこと。お風呂でも、寝る前でも、頭のどこかが仕事につながったままでした。

管理者になると、オンコールは自分に集中しやすくなります。持ち回りなのか、自分が最終の受け皿なのか。ここは絶対に確認したほうがいい。このあたりはオンコールがきつい看護師へにもっと詳しく書いています。

5. 給与は、こちらから言っていい

これは聞いてよかったことです。

私は面接で給与の提示を受けたあと、「年収を落とさない額でお願いしたい」と自分から伝えました。そして、その要求は通りました。

言ってみるものだと思います。管理者を任せたい側は、あなたに来てほしいわけですから。遠慮する場面ではないです。

ただ、通ったあとに感じたのはうれしさだけじゃなくて、責任でした。この額をもらうということは、それに見合うものを返さなきゃいけない。あの感覚は最後まで消えませんでした。だから交渉するときは、通ったあとの自分も一緒に想像しておくといいと思います。

引き受けてよかったこと

不安な話ばかり書いたので、得たものも書きます。

ひとつは、職員を守れたこと。私はもともと「職員は宝」だと思っていました。職員を大事にしない会社が伸びるわけがない、と。管理者をやってその考えが変わることはなくて、今でもあれは間違っていなかったと思っています。

スタッフが判断に迷って電話をくれたとき、その一本のおかげで受診が早まったことが何度もありました。逆に、相談が遅れて対応が後手になった経験もある。だから「聞いてくれてよかった」と言い続けることが、そのまま利用者さんの安全につながるんだと身体で分かりました。少人数だからこそ、その積み重ねしかなかったです。

もうひとつは、数字で現場を見られるようになったこと。売上と人員とケアの質がどうつながっているのか。営業も自分でやったからこそ、そこが体感として残りました。この視点は病棟に戻った今も消えていません。

あと現実的な話をすると、管理者経験は転職市場でわりと強いカードになります。マネジメント経験のある看護師は、実際そんなに多くないので。

それでも私は辞めました

正直に書きます。私が管理者を辞めた理由は、人間関係と、やりがいを感じられなくなったことでした。

運営と事務に追われて、自分が現場の看護から遠くなっていく感覚。人と人の間で調整するばかりで、看護師として何をしているのか分からなくなっていく感覚。体力の問題ではなく、気持ちの問題でした。

そのあと転職の面接で志望動機を聞かれたとき、私は「事務作業が辛くて、現場に戻りたい」と正直に答えました。きれいな理由じゃないと思っていたけど、ちゃんと通じました。今は循環器外科の病棟にいます。

後悔はしていません。ただ、引き受ける前にこの5つを確認していたら、もう少し違う形で続けられた気はしています。

断るのも、ちゃんとした選択

最後にこれだけ。

管理者の打診を断ることに、後ろめたさを感じなくていいです。管理者に求められる力は、看護が上手いこととは別のものです。調整する、待つ、数字を見る、営業に出る。それが苦しい人は、現場でケアを続けるほうが確実に力を出せます。

断るなら「今の自分にはまだ早いので、もう少し現場で経験を積みたい」で十分だと思う。関係も壊れないし、実際にそれが本音のことも多いはず。

逆に、条件を全部聞いたうえで「これならやれそう」と思えたなら、やってみる価値はあります。「自分にできるのか」という迷いは、たぶん引き受ける前には消えません。私も消えないまま受けました。結局1年で辞めたけれど、あの1年で得たものを手放したいとは思いません。

迷っているなら、まず条件を全部紙に書き出してみてください。判断はそこからです。

管理者になったあとで苦しくなってしまった人には訪問看護の管理者を辞めたい、仕事の中身をもっと知りたい人には訪問看護の管理者ってどんな仕事?もあります。

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