「訪問看護に興味はあるけど、一人で訪問するのが怖い」。この言葉、本当によく聞きます。そして、その怖さのせいで一歩踏み出せずにいる人も。
私は病棟から訪問看護に転職して、その後、立ち上げ期の訪問看護ステーションで管理者をしていました。毎日オンコールを持って、スタッフからの電話相談を受ける側だった人間です。
つまり、「一人で怖い」と感じているスタッフの電話を、向こう側で受け続けてきました。今日はその立場から話をさせてください。電話の向こうがどうなっているか、知っているのと知らないのとでは、怖さがだいぶ違うと思うので。
先に伝えたいこと。怖いと思えるのは、向いている証拠です
いきなり結論みたいになりますが、これだけは最初に言いたくて。
「一人が怖い」と感じられる人は、訪問看護に向いています。
慰めじゃないです。怖さの正体は「自分の判断が利用者さんの命に関わるかもしれない」という想像力で、それはそのまま慎重さです。慎重な人は、迷ったら確認するし、わからないことをわからないと言える。訪問看護で一番大事な資質だと私は思っています。
逆に、一人になっても何も怖くない人のほうが、正直ちょっと心配になります。怖さを感じないというのは、リスクが見えていないということでもあるので。向き不向きの話は訪問看護に向いていない人の特徴|元管理者の本音にも書きましたが、「怖い」は不向きのサインではありません。むしろ逆。
電話を受ける側から見えていたこと
一番多かったのは「状態変化」の相談
管理者として受けていた電話で一番多かったのは、利用者さんの状態変化の相談でした。「いつもと様子が違う気がする」「この症状、様子を見ていいのか判断がつかない」。そういう電話です。
訪問看護って、一人で訪問はするけど、一人で判断する仕事ではないんですよね。ここ、誤解している人がすごく多い。現場に一人でいても、電話の向こうには管理者なり先輩なりがいて、一緒に判断する。それが前提の仕事です。
躊躇なくかけてくれた電話が、利用者さんを守った
スタッフが迷ったときにすぐ電話をくれると、こちらは利用者さんの状態を早く把握できます。把握が早ければ、ケアをタイムリーに変えられるし、状態によってはすぐ病院受診につなげられる。実際、迷わず連絡をくれたおかげで素早く受診に動けたケースがありました。
あの電話がなかったらと思うと、今でもぞっとします。
逆に、相談が遅れたときに起きたこと
残念だった例もあります。スタッフが迷ったのに、相談してこなかったケース。結果として、こちらの把握と対応が遅れました。もっと早く知れていれば、先の予測を立てて、利用者さんやご家族に説明も対応もできたはずでした。
責めたい話ではないんです。「こんなことで電話したら迷惑かな」と考えてしまう気持ちは、痛いほどわかるから。でも受ける側の実感として、電話で困ったことは一度もありませんでした。むしろ感謝していました。「こんなことで…」と迷うレベルの電話こそ、かけてきてほしい。それが受ける側の本音です。
私にも、怖い分野がありました
偉そうに書いてきましたが、私自身にも一人が怖い場面はありました。
経験が浅い分野、特に消化器内科と循環器の症状の判断には不安が大きかったです。「これは様子を見ていいのか」と迷って、不安になったことも普通にあります。
一方で、脳外科の症状は自信を持って判断できました。単純に、経験があったからです。
つまり「全科に自信がある看護師」なんて、どこにもいないんですよ。管理者ですら得意と不安の凸凹がある。あなたに不安な分野があるのは当たり前で、それは病棟経験の中身が違うだけの話です。病棟から移るときのギャップについては病棟から訪問看護への転職|元管理者がリアルを語るに詳しく書いています。
怖さは「あなたの問題」ではなく「職場の体制」で決まる
ここまで読んで気づいた方もいると思いますが、「一人が怖い」かどうかを左右するのは、実はあなたの能力より職場の体制です。
迷ったら電話していい文化があるか。電話したら嫌な顔をされないか。同行訪問でちゃんと慣らしてくれるか。同じ「一人での訪問」でも、後ろに相談できる体制があるかないかで、怖さはまったく別物になります。
私のステーションは立ち上げ期で、もといた施設のスタッフがそのまま訪問看護スタッフになったので、新人さんを迎える機会はありませんでした。ただ、もし迎えていたら、同行訪問を重ねて、指導とフォローで不安を取り除いて、働きやすい環境を作ることに一番力を入れたと思います。
私の信条は「職員は宝」です。スタッフを大事にできない管理者が、利用者さんを大切に思えるはずがない。それから「最初はみんなわからないのが基本。教育は時間をかけて根気よくやるもの」。これも譲れない考えでした。
こういう考えの管理者は、探せばちゃんといます。だから、怖さを一人で克服しようとするより、そういう管理者がいる職場を選ぶことに力を使ってほしいんです。
職場選びで確認してほしいこと
じゃあ何を確認すればいいのか。元管理者として、ここは見てほしいというポイントを挙げます。
- 迷ったときの相談体制(訪問中に誰へ、どうやって連絡するのか)
- 同行訪問の期間(「一週間で独り立ち」みたいな職場は正直しんどい)
- オンコールの分担(管理者一人が抱えているのか、複数で回しているのか)
- 教育方針(「時間をかけて育てる」という言葉が出てくるか)
ただ、この手の質問って面接で直接聞きにくいんですよね。「相談体制は?」と聞いた瞬間、「自信がない人」と見られないか気になってしまう。
そこで使えるのが転職エージェントです。担当者を挟めば、同行訪問の期間もオンコールの実態も、自分の印象を気にせず確認できます。訪問看護の求人を見るならナース専科の公式サイトはこちらから登録して、上のリストをそのまま質問として投げてみてください。
ちなみにオンコールそのものが不安な人は、オンコールがきつい看護師へ|毎日オンコールだった私の体験と負担を減らす選択肢も合わせて読んでもらえたら。毎日オンコールだった私の体験を書いています。
まとめ
訪問看護は、一人で訪問するけど、一人で判断する仕事ではない。電話の向こうには必ず人がいます。
そして受ける側は、「こんなことで」という電話にこそ感謝している。これは受ける側だった私が断言します。
怖いと感じるあなたは、慎重で、リスクが見えている人です。その怖さを消す必要はなくて、怖さを預けられる職場を見つければいい。あなたの電話を待っている管理者は、ちゃんといますから。

