看護師なのに営業?訪問看護の管理者が地域を回った話

働き方・職場

訪問看護の管理者と聞くと、利用者さんのケアをまとめる仕事だと思う人が多いと思います。私も最初はそうでした。でも実際にやってみたら、看護師なのに営業もすることになりました。立ち上げ期のステーションだったからです。

看護の仕事だと思っていたら、営業もすることになった

私が管理者を任されたのは、まだ利用者さんの数が少ない立ち上げ期のステーションでした。知り合いから声をかけられて引き受けた話で、面接では給与や体制のことは聞いたものの、業務の中身までは正直そこまで深く詰めていませんでした。契約件数がそのまま経営を左右する時期で、誰かが外に出て関係先を作らないと、そもそも仕事が回ってこない。看護の技術とは全然別の話です。

管理者=現場の看護をまとめる人、くらいの理解で引き受けたので、実際に外回りをすることになったときは戸惑いました。病棟でシフトに入っていた自分が、まさか地域を回って関係先を作る側になるとは思っていませんでした。

実際に回ったのは、この5か所

営業といっても飛び込みで名刺を配るようなものではなく、地域の関係機関に顔を出して「こういうステーションです」と知ってもらうことが中心でした。回ったのは主にこのあたりです。

地域包括支援センター、グループホーム、高齢者施設、病院の地域連携室、あとはケアマネジャーさん。どこも利用者さんの紹介元になり得る場所で、顔を覚えてもらえるかどうかが次の依頼につながります。看護の話をしながら、同時に「うちに頼んでも大丈夫」と思ってもらう会話をする。この感覚は病棟にいたころには一度も使ったことのない筋肉でした。

ケアマネさんとの関係づくりは特に大事で、日々の情報共有をこまめにするだけでも次の紹介につながることが多かったです。営業というより、地道な信頼の積み重ねに近かった気がします。

メンターが外れてからは、営業の判断も一人でするしかなかった

立ち上げ期には一応メンターがついていて、最初のうちは相談しながら動けていました。ただこのメンターは契約上3か月だけの関わりで、期間が終わればそこで関係も終わりです。それ以上でもそれ以下でもありませんでした。

メンターが外れたあとに感じたのは、忙しさよりも孤独とか孤立という言葉のほうが近い感覚でした。本部にも相談できる相手はいたのですが、信用しきって全部を預けるところまでは至らなくて、結局「この施設に営業をかけるかどうか」「この関係先とどこまで踏み込むか」みたいな判断を、自分ひとりで決めていくことになります。誰かに答え合わせしてもらえない状態で動き続けるのは、営業の内容そのものよりもしんどかったです。

契約は増えるのに、職員は増えなかった

営業がうまくいった分、訪問件数は管理者になってからも減ることなく増え続けました。数字としてはありがたい話で、その分職員の給料もちゃんと払えていました。ここは経営として素直に良かったところです。

ただ、その裏で職員はほとんど増えませんでした。私のステーションは施設からそのままスライドしてきた2人がずっと最後まで働いてくれていて、そこから人数が増えることはなかったんです。利用者さんだけがどんどん増えていくので、結果として訪問が自分に集中していきました。

営業で契約を取ってくる立場と、その契約をこなす立場が同じ自分だったので、増やした分だけ自分の首を絞めているような感覚もありました。今思えば、採用にもっと時間を割くべきだったのかもしれません。でも立ち上げ期はそこまで手が回らなかったのが正直なところです。

結果として、私が在籍した1年の間、職員は最後まで2人のまま増えませんでした。人を増やす動きと、契約を増やす動き。本当は両方を同時に進める必要があったのに、目の前の紹介依頼に応えることで精一杯で、採用のほうにまで手が回らなかったというのが実際のところです。

「看護師なのに営業」をやってみて分かったこと

最初の1か月で一番きつかったのは、看護の仕事そのものより運営と営業でした。初めての経験だったので、何をどう進めればいいのか手探りで、教えてくれる人もいない中で動いていました。看護学校でも病棟の教育でも、こういう外向きの動き方は一切教わってこなかったので、毎回手探りでした。

それでも、続けているうちに見えてきたこともあります。売上と人員とケアの質が、どうつながっているのかを自分の目で見られるようになったこと。営業も自分でやったからこそ、経営の数字が単なる数字ではなく、現場の忙しさや職員の負担と直結しているものだと実感として分かるようになりました。この視点は、今病棟に戻ってからも自分の中に残っています。

あと、営業先で話をするたびに、自分たちのステーションが地域からどう見られているかを直接聞ける機会にもなりました。評判とか、期待されていることとか、逆に不安に思われている点とか。現場にこもっていたら絶対に入ってこない情報が入ってくるのは、大変さの裏側にあった収穫だったと思います。

働く側から見ても、営業の有無は無視できない

これは管理者になる人だけの話ではなくて、これから訪問看護ステーションで働く場所を選ぶ人にとっても関係のある話だと思っています。立ち上げ期のステーションほど、看護以外の業務が管理者ひとりに集中しやすい。管理者が外回りに追われていれば、それだけ現場の教育や相談に割ける時間も削られます。求人票の「アットホームな職場です」みたいな言葉だけでは、そのステーションが今どのフェーズにいるのかは見えてきません。

面接で「立ち上げ期か、それとも安定期か」「管理者は営業もしているのか」を聞いてみるだけでも、そのステーションの実情がだいぶ見えてくると思います。聞きにくい質問に感じるかもしれませんが、入ってから知るよりずっといいです。

これから管理者を任されるかもしれない人へ

もし今、管理者の打診を受けている人がいたら、営業も業務に含まれるのかどうかは事前に確認しておいたほうがいいと思います。立ち上げ期のステーションかどうかで、求められる役割はかなり変わってきます。訪問看護の管理者に誘われたら確認したい5つのことにも書きましたが、条件は引き受ける前に紙に書き出して確認するくらいでちょうどいいです。

管理者の仕事内容をもっと具体的に知りたい人は訪問看護の管理者ってどんな仕事?も参考になると思います。逆に、これから転職先として訪問看護ステーションを選ぶ側の人は訪問看護ステーションの選び方で、立ち上げ期かどうかを見極めるポイントにも触れています。

看護師の仕事に営業なんて、と思う人もいるかもしれません。私もそうでした。でもやってみると、それはそれで自分の中に残るものがある経験でした。

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